特許について ~火に油を注ぐ?~/広報企画委員会 弁理士 清水 聡
新聞掲載記事- 特許(発明)
「特許制度は、天才の火に利益という油を注いだ。」――これは元アメリカ大統領リンカーンの言葉です。実は、リンカーンも図に示すような特許権を得ています。
リンカーンの言葉は、特許制度の重要な一面を表しています。すなわち、優れた発明に対して経済的な利益を結びつけることで、技術革新を促進する仕組みこそが特許制度です。
日本の特許法も同様の趣旨を明確に示しています。特許法第1条では、「発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、産業の発達に寄与すること」を目的とすると定められています。つまり、発明をした者に一定期間の独占権を与えることで、その努力に報い、さらなる技術開発を促すことが、特許制度の根幹です。
では、この「独占権」とは何でしょうか。これは、他社が同じ技術を無断で使うことを禁止できるという意味です。言い換えれば、あなたの会社だけがその技術を使って製品を作り、販売できるということです。
想像してみてください。競合が多い市場でも、「この性能は御社しか出せない」と言われる製品があればどうでしょうか。中小企業の経営者にとって、この点は非常に重要です。優れた技術を持っていても、保護がなければ他社に模倣され、価格競争に巻き込まれてしまう可能性があります。しかし、特許権を取得していれば、他社の参入を防ぎ、自社のみがその技術を使って製品を販売できるのです。価格競争に巻き込まれることなく、適正な利益を確保できることが期待できます。これが特許権の大きな力です。
さらに、特許権の価値は自社で製造する場合だけに限りません。他社に「使ってもいいですよ」と許可を出し、その代わりにライセンス料(ロイヤリティ)を受け取ることもできます。つまり、設備を持っていなくても、技術そのものが収入源になりえます。
一方、もし他社が無断であなたの特許権に関する技術を使った場合には、「やめてください」と差止めを求めたり、あなたが被った損害に対して損害賠償を請求したりすることも可能です。これは、単なるアイデアではなく、法律によって保護された「権利」だからこそできることです。
中小企業の経営者の方々にとって、資金力や販売力で大企業と真っ向から競争するのは簡単ではないでしょう。しかし、特許権があれば、話が変わってきます。設備投資や販売力で大企業に劣っていたとしても、独占権を背景に市場で優位に立つことができるからです。また、特許権を保有していること自体が企業価値の向上につながり、金融機関や投資家からの評価にも好影響を与えることも期待できます。
ここで、もう一度リンカーンの言葉を思い出してください。特許制度は、発明という「火」に、利益という「油」を注ぐものです。リンカーンの言葉どおり、発明という火に利益という油を注ぐことで、その価値を最大限に引き出すことができるのです。中小企業の経営者にとって、特許は難しい制度ではなく、自社の未来を切り開く経営ツールの一つとして活用すべき重要な制度といえるのではないでしょうか。特許は大企業だけのものではありません。むしろ、中小企業が活用すべき「攻めの経営ツール」といえるのではないでしょうか。あなたの技術を守り、そして利益に変えるために。特許制度を、ぜひ積極的に活用してみてください。
リンカーンの、「浅瀬を航行する船」に関する特許権(米国特許番号6469号)の図面
