税関の業務内容 後編/広報企画委員会 弁理士 清水 聡
新聞掲載記事- 海外
先月に引き続き、名古屋税関の職員の方への取材記事を掲載します。先月の記事では、権利者が侵害品を発見してから、差止申立書を作成し、税関が受理するところまでを説明しました。さぁ、手続きはどのように進んでいくのでしょう。
Q 差止申立てが税関で受理された後、どのように手続きが進みますか。
「税関での取り締まりが開始され、輸入申告される貨物や国際郵便物の検査を行います。
税関における輸入手続きは、輸入申告をする場合と、郵便物を提示する場合の2種類があります。輸入申告の場合、税関職員が申告書の内容を審査し、検査の要否を判断します。提示の場合は、日本郵便が税関に提示する郵便物について、外観や税関告知書に記載された情報などに基づいて、税関職員が検査の要否を判断します。検査というのは荷物を開けて内容物を確認することです。」
Q 輸入申告は、貨物を外国から日本に持ち込む全ての人がやらなきゃいけないんですか。
税:「はい、外国から日本に貨物を輸入するときは、必ず輸入申告をします。」
Q 個人で外国から物を買うときもですか。
「はい。ただ、一般的には、申告を代理人(通関業者)に委任することが多いですね。通関業者が、輸入者の代理人として申告をするので、一般の方にはなじみが薄いと思います。
また、郵便物については中身が20万円を超えるものについては申告が必要になりますが、それ以外の郵便物(郵便小包も含まれます)については申告行為が不要とされており、日本郵便から提示されています。」
Q 申告が必要な一般の貨物と、郵便小包とは、どう違うのですか。
「わかりやすく言うと、一般の貨物は、宅配便として配達されるものです。郵便小包は郵便局が配達するものです。」
Q 税関職員が権利侵害の疑いのある貨物を発見した場合、どのような手続きが行われますか。
「認定手続を開始します。認定手続とは、知的財産侵害物品に該当するか否かを認定するための手続です。一般的な手続きの流れは通常の手続き(図1)に記載のとおりです。知的財産を侵害する疑いのある貨物を発見した場合、権利者(特許権者、意匠権者、商標権者、著作権者など)と、当該貨物を輸入しようとしている輸入者に、認定手続の開始を通知します。その通知書には、疑義貨物の品名数量等のほか、知的財産侵害物品に該当すること又は該当しないことについて、証拠を提出し意見を述べることができる旨の記載があり、権利者と輸入者はいずれも意見・証拠を提出できます。また、提出いただいた意見・証拠は相手方に開示しますので、権利者、輸入者は、いずれも相手の意見・証拠に対して反論する機会もあります。提出された意見・証拠や反論に基づいて、最終的に税関が侵害物品に該当するか否かを認定します。」
Q その意見提出は書面でやっていますか?
「書面ですね。相手方に開示もしますので。」
Q 大体、誰が意見を書いてきますか?
「差止申立てを専門家(弁理士など)に依頼した場合は、その専門家が作成されることが多いですし、権利者が意見を作成されることもあります。」
Q 意見の交換は大体どのくらいかかりますか。
「認定手続は、一般的に手続きを開始してから1か月以内を目途に認定を行っていますが、意見や証拠の提出が複数回続き、長引く場合もあります。認定手続の結果、侵害物品に該当すると、没収することになりますし、該当しなければ、輸入を許可することになります。」
Q 最終的には、誰が認定するのですか?
「認定手続を開始した官署の長が認定します。」
Q 簡素化手続(図1)というのはどのようなものですか。
「差止申立てが受理されている侵害疑義物品が発見された際、認定手続開始通知に併せて、輸入者等に対し、侵害品に該当しないこと(争う旨)を申し出る意思の有無を確認するという点が通常の認定手続と大きく異なります。輸入者等が争う旨の意思表示をしなかった場合、税関は差止申立書等の内容に基づき該当認定を行い、権利者は意見・証拠を税関に提出する必要がありません。」
Q 基本的には、輸入する人が意思を示すかどうかだけですね。
「過去の認定手続においては、輸入者から何ら意見・証拠が提出されない場合が多かった一方で、権利者が侵害疑義物品を差し止めるためには必ず意見・証拠を提出しなければならなかったことから、権利者側に人的・経済的負担が生じていたという実態があり導入されたのがこの制度なんです。簡素化手続により、権利者にとっては毎回の書類作成・提出の負担が軽減されることになりました。
なお、繰り返しになりますが、簡素化手続が執られるのは、差止申立てが受理されたもののみになります。」
Q 差止申立ては、自社の権利が侵害されていると気付いたら出しておいた方がいいですね。
「そうですね。数多くの知的財産権がある中で、差止申立てが受理されれば、税関職員はその権利を認識でき、有効な取り締まりが可能になりますし、簡素化手続も活用されます。でも、差止申立てが出されていなければ、権利の内容や侵害の有無を判断することが非常に困難になります。
海外から多くの貨物が輸入される中で、効率的に侵害疑義物品を発見するために、権利者の皆様が持たれている情報を提供いただければ幸いです。例えば、誰が輸入しているか、誰が海外から発送しているか、といった情報があると、税関は、より有効に差止めができると思います。」
Q 輸入者や仕出人、宛名とかですか。
「おっしゃるとおりです。」
Q これらの情報を含めて、何かあれば税関に相談して、差止申立てを提出することが重要ですね。本日は、ありがとうございました。
税関職員の方々は、24時間体制、365日、知的財産侵害物品の取り締まりを行っていらっしゃいます。差止申立てや、簡素化手続を上手に利用して知的財産権を守っていきましょう。
