ワールドカップと商標~スポンサー保護と自由競争~/弁理士 黒瀬 勇人
新聞掲載記事- 商標(ブランド)
1930年以来4年毎に開催され、世界最高のサッカー大会と位置付けられるFIFAワールドカップは、今年、23回目の開催となります。世界大会ともなれば運営費用も莫大ですから、スポンサーが経済的な貢献をしています。23回大会のスポンサーには、Adidas、Coca-Cola、Visa等の欧米企業の他、サウジアラビアやカタール等の企業も名を連ねており、石油、清涼飲料、航空関連等、業種も多岐にわたっています。
日本では、2026年4月現在、主催者(FIFA)によって「FIFA WORLD CUP」が、47件も商標登録されています。これにより、スポンサーの多岐にわたる業種の様々な業務が概ね網羅されています。「FIFA WORLD CUP」は、原則、スポンサーのみ使用することが認められています。一方で、スポンサー以外の競業者は、使用を禁止されます。仮に使用すれば、それは商標権の侵害を構成します。このように、主催者は、スポンサー以外の商標使用を制限することで、負担額に見合うだけの見返りがスポンサーにもたらされるよう調整しています。
もっとも、競業者の中には、「FIFA WORLD CUP」を使用することなく、すなわち、商標権の侵害を避ける形で、ワールドカップの熱気やイメージ、雰囲気等を上手く利用しワールドカップとの関連性を感じさせて自身の利益に繋げていく企業もいます。かつて、ワールドカップの開催都市で、公式スポンサーではない企業が、サッカー関連のイベントを大々的に実施しサッカーグッズを販売したことがありました。間接的アンブッシュマーケティングといわれるマーケティング手法の一つです。これについて、主催者やスポンサーは、規制対象とされることを望むでしょう。一方、競業者は、自由競争の一環としての戦略的な営業努力だから認めて欲しいと考えるでしょう。主催者は、注意喚起を行ったり、商標法以外にも様々な法律への該当性を検討した上で法的措置を講ずることがあります。競業者にとっては、マーケティングが成功すればメリットは大きいものの、法的措置を受けるリスク、「消費者を誤認させている」、「ズルい」といったイメージをもたれるリスクもはらんでいます。
日本には間接的アンブッシュマーケティングを直接規制する法律は存在しません。そんな中、委縮ムードだけが蔓延すれば、自由競争の阻害に繋がり、大会への盛り上がり気運を失わせ、かえってスポンサーの利益を損なわせることもあるかもしれません。
様々な意味で、正にバランスが問われるところです。
登録第3140408号
